究極の傍観者

歴史、文学、宗教など人文科学系情報を中心にしようとは思っていますが、それ以外のことも書きます。人間のすることはみんなどっかでつながっていますから。記事内容に関するコメントやトラックバックはご自由にどうぞ。

大谷光瑞

大谷光瑞の「食」

神田古本祭りで買った本。とっくに読んだのだが感想を書くのを忘れていた・・・

大谷光瑞とはあの中央アジア探検で有名な浄土真宗本願寺派第22世法主。つまり坊さんだ。が、相当のグルメだったようで、日本はもちろん、中国やヨーロッパで美食の限りを尽くしたらしい。そのことは以前、大谷光瑞の生涯に書いてあったので知っていた。

その光瑞が、世界各国の料理や食材についてかなり自由気ままに書き綴ったのがこの「食」という本。元は漢文調で書かれているらしいが、私が入手したのは現代語訳。だからさらっと読める。

内容も現代人にとってはそれほど驚くことが書かれているわけではない。が、この本が最初に世に出たのは戦前の昭和5年ごろだということに注意。そんな昔にずいぶん贅沢をしていたものだ。もちろん浄土真宗では昔から肉食妻帯が許されていたのだし、華族(伯爵)だから金には困らない。だからいくら美食したってかまわないのだが・・・

感想は横着して箇条書き。

・世界の料理とはいえ日本、中国、ヨーロッパがメイン。インドやジャワ料理は多少出てくるが、トルコ(西アジア系)料理は皆無。当時の限界だろう。

・日本とヨーロッパ料理の話は現代人にとっては常識なことが多い。が、中国料理は別。食材の歴史的な分析も興味深い。筆者は相当中国文化や漢学に詳しいようだ。だからこそ原文は漢文調なのだろう。原文を読んでみたいが、私には無理かな・・・

・筆者はもちろん日本人、そして京都生まれだから、やはり日本の味がいちばん好きらしいが、特に偏見なく各国の料理を食べているし、それぞれの長所、短所をはっきり指摘している。今となっては昔話だが、当時は日本の食品保存技術とか食品衛生観念はヨーロッパに比べてだいぶ劣っていたようだ・・・

・筆者が「華族」のせいか、取り上げる料理は、漬物や京都の惣菜など一部を除き、「高級な料理」ばかり。のでハンバーガーやホットドッグはもちろん、フィッシュアンドチップスとかクレープとかピロシキとかフォーとかタコスとか、は一切出てこない。当時だってこういうメニューはあったはずなのにw ここらへんがお偉いさんの限界だろう・・・

・坊主のくせにどちかといえば野菜より魚、そして魚より肉が好きらしい(もちろん真宗だから構わないのだが)。これは戦前のエライ人、特に関西の人に共通かも・・・

とにかく面白い本なので読んで損はない。おそらくちょっとした図書館ならおいてあるはず。あるいは古本屋めぐりをするとか。アマゾンでも買えるけど高いのでw

最近買った本:「大谷光瑞」

杉森久英著。
ウイグルと大谷探検隊で紹介した「大谷光瑞の生涯」とは別の伝記。八重洲地下街の古本屋で買った。

「大谷光瑞の生涯」より詳細に光瑞及び周辺の人たちを描写している。また光瑞を全面的に賛美しているわけではなく、時代背景や家柄による限界(中国文化を愛しているにも関わらず、中国は日本人が指導しなくてはならないと信じている点など)も容赦なく暴いている。ただ、単なる読み物としてなら「大谷光瑞の生涯」のほうが読みやすいかも。


ウイグルと大谷探検隊

中国新疆ウイグル自治区で暴動が起きた。報道規制されているらしい。相変わらず中国のやることは乱暴だ。しかし、漢人が「ウイグル人優遇はおかしい」と暴れることは少しだけ理解できる。「逆差別」こそが現在の差別問題だから。

それはさておき、ウイグルと聞いて、津本陽著「大谷光瑞の生涯」のことを思い出した。最近は読んでいないが、一時期夢中になっていた。

「大谷光瑞」という人はなかなか怪物で、とてつもない別荘(二楽荘)を建てたり、中央アジアに探検隊を派遣(最初は自分も同行)したりしている。この本でもかなりの部分が探検の話だ。中央アジア(西域)に行くまでがたいへんで、まず航路でヨーロッパに行き、資料や道具を準備した上でロシアへ。そこからバクーを経てカスピ海を渡る。そこから東へむかって中国領内へという大旅行だ。明治の人は偉かった。




面白い本なのに、あまり売れてはいないようだ。もしかして門徒の間では禁書なのかな...
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