宮脇俊三氏の最初の台湾旅行記。著者は少なくとも台湾渡航のエッセイを三つ書いている。すべて読んだがやはり最初の記録であるこの「台湾鉄路千公里」が一番面白い。

なんといってもかなり前(1980年)の記録だから、今の台湾とはだいぶ違う。まだハイテク企業はないし(あったとしても今ほど大企業ではないはず)、中国との交流もできなかった時代の旅行記である。そのぶん日本語を話せるおじさん、おばさんが多数著者の前に現れる。今では別な理由で日本語が話せる若者が増えているらしいが・・・

いつもの癖でどうでもいいことが気になってしまう。それは、この台湾渡航のときまで、著者が「紹興酒」をそれほど飲んではいなかった、という事実だ。文庫本では、74ページにそう読める記述がある。しかし、たしか晩年の著者は医者に止められているにも関わらず自宅で紹興酒を飲みまくっていたはずだ。「紹興酒」が著者のお気に入りになったのはいつぐらいのことなのだろう?