読んだ本といっても滝田ゆうの漫画。ただし、ギャグマンガでも劇画でもない。芸術作品だ。つげ義春の作風とも通じるなにかを感じる。

舞台は戦中の玉の井遊郭。主人公の少年はスタンドバー「ドン」の息子。父が料理を作り、母と姉が接待する。

「ドン」は酒を飲ませるだけの店だが、近所には「銘酒屋」と呼ばれる売春宿が多い。客はまず主人公の店で一杯引っかけてから女のところへ乗り込む。なお、落語の明烏によると、女を買う前に酒を飲むことを「中継ぎ」というそうだ。

「ドン」店内のラジオから聞こえてくるのも落語。町の風景も下町情緒たっぷり。あと飼い猫「タマ」もかわいい。ネコ好きは最後で泣いてしまうかも。下町散歩と猫が好きな人にはお勧め。